ぼんやりが飛び火してゆくあのひともあのひともあのひとも炎上

わたしはぼんやりが好きで、いままでぼんやりだけで生きてきたと言ってもいい。大事な質問をされたときも、わたしは、たぶん、ぼんやりしていたとおもう。うん、なのか、ううん、なのか、うーん、なのかわからず、うつろな眼であなたをみていた。どっちなの? とあなたが言う。もうなんでもいい、どっちでもいいから答えてよ、とあなたが言う。でも、そんなときに、限って、ぼんやりの真っ盛りというか真っ最中というか、ぼんやりの焔に炎上してしまう。わたしは、ぼおぼおぼんやりしだす。いいのね? とあなたが言う。一回だよ、聞くのは。この一回が今あなたのとこに来たんだよ。かの女が部屋をでていく。去られたわたしは、去られた部屋で、ずーっと燃え上がっている。今のわたしが、歌なのか詩なのか句なのか文なのか、それさえも、わからずに。炎を放つ。

この記事を書いた人
yagimotoyasufuku
柳本々々(やぎもと・もともと)1982年、新潟県生まれ 川柳作家
安福 望(やすふく・のぞみ)1981年、兵庫県生まれ イラストレーター